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福岡高等裁判所 昭和39年(ラ)124号 決定

抗告人 川田勇(仮名)

相手方 川田和男(仮名)

右法定代理人親権者母 川田玲子(仮名)

主文

原審判を取消す。

本件を長崎家庭裁判所佐世保支部に差戻す。

理由

職権をもつて調査するに、本件は抗告人と相手方の親権者であるその母川田玲子との間に出生した、抗告人の法律上の子であると主張する未成年の相手方が、親権を行う父であるとする抗告人に対し、扶養料を請求する事件であるから、民法第八二六条の親権を行う父と子との利益が相反する行為に該当するので、この扶養料を求める審判の申立は、前示川田玲子と特別代理人とが、共同して相手方の法定代理人となつて、申立つべきである(最高裁、昭和三三年(オ)第九六八号同三五年二月二五日第一小法廷判決参照)。しかるに、本件は相手方の法定代理人の一人である前示川田玲子のみが法定代理人として、申立てていることが明らかであるから、この申立は不適法であるといわなければならないが、本件は急を要する扶養料を請求する申立であることを考慮し、それに特別代理人として選任される者が、本件申立及びそれ以後の行為を追認すれば、そのかしは結局治癒されるにいたるものであり、かつ追認の見込がないとはいえないので、当裁判所において、本件申立を却下することなく、原審判を取消し、選任された特別代理人の追認の上、更に相当の審判をなすよう本件を原裁判所に差戻すべきものと認め、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 池畑祐治 裁判官 秦亘 裁判官 佐藤秀)

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